この本の内容を簡単にまとめると
- 大御所パティシエ藤生義治シェフの待望の一冊
- フランス古典菓子の現代へのアレンジが見事!
- コンフィズリー(砂糖菓子)のレシピの豊富さは貴重です。
「現代に甦るフランス古典菓子」と藤生シェフの基本情報
パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウの 現代に甦るフランス古典菓子
藤生義治著
2017年8月4日発売
柴田書店発行
¥4,200(税込¥4,536)
全212ページ
東京・高幡不動の大人気店「パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ」のオーナーシェフ、藤生義治さんの待望の初著書です。
藤生シェフは1947年生まれ70歳。未だに現役のパティシエとして大活躍されています。
東京製菓学校を卒業後、都内のパティシエで3年修行後、渡仏。
パリの「ジャン・ミエ」、ウィーンの「ハイナー」等で修行後、帰国。
神奈川県内の洋菓子店を経て、「オーボンヴュータン」のオーナーシェフである河田勝彦シェフが手がけていた埼玉・浦和の「かわた菓子研究所」に勤務。
その後東京・立川の「エミリーフローゲ」のシェフに就任。
93年に東京・高幡不動に「パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ」を開業し、2007年にはJR立川駅構内に2号店もオープンしました。
数多くの焼き菓子や生菓子、コンフィズリーなどを販売する人気店で中でも「ソーシソン」という焼き菓子は他店ではなかなか見る事のない絶品で私も大好きです。
公式ホームページはこちら。
店舗に電話注文の他に楽天のショップでも購入できます。
本の内容は?
「現代に甦るフランス古典菓子」というタイトルどうり、シェフが渡仏中に出会った当時のフランス菓子や古典文献で見つけたフランス菓子をベースに現代でも美味しく、美しく、作りやすく、藤生シェフがアレンジしたレシピ全部で54品紹介されています。
このシェフがアレンジした部分がポイントで、なぜこう変えたのかという点を詳しく説明してくれているのでそこにこそシェフのこだわりや想いがぎゅっと詰まっていて読んでいると圧倒されますし、ますます藤生シェフのファンになります。またものすごく勉強になる点でもあります。
そして古典菓子のアレンジだけではなく、「フジウの定番菓子」も焼き菓子、生菓子、コンフィズリーという3パートに分けて沢山紹介されています。
こちらは製法のポイントが詳しく解説されています。目指す仕上がりにするためのポイントがとても丁寧で詳しい解説で、若手のパティシエにとってすごく参考になる箇所かと思います。
レシピは基本的にお店で作る単位が基本となっており、家庭では作れない量や製法の場合もあります。また、基本的な製菓技術を分かった上でのレシピになっているので上級者向けのレシピであると言えると思います。
どんなレシピがあるの?
全部で大きく3つのパートに分かれています。
Ⅰ フジウで進化した古典菓子
この本ならでのパートですね。1800年代から1950年までに発行されたフランスの古典菓子本からピックアップした古典のレシピと藤生シェフのレシピを一緒に記載することで、アレンジした点が浮かび上がる構成になっています。
基本は古典菓子なので他店ではなかなか見る事のないお菓子の数々にイマジネーションが膨らみますし、実際に販売しているものを食べてみたいと思うのではないでしょうか。
シェフのスペシャリテの「ソーシソン」、アーモンドとチョコレートをたっぷり配合した焼き菓子「ビスキュイショコラ」、これがフィナンシェ?とびっくりする見た目の古典流の「フィナンシエール」。また今でも馴染みのある「リンツァートルテ」や「エクレール」や「サントノーレ」など17品のレシピが紹介されています。
Ⅱ フジウの定番菓子
配合はシンプルに、誰が作ってもおいしく。後世まで受け継がれる菓子を目指して
と藤生シェフが語るようにシンプルでわかりやすいながらも工夫やこだわりのつまった定番菓子のレシピが紹介されています。
フール・セックは、レモンの香るクッキー「シトロン」、アーモンドが香ばしくほろほろの生地でチョコレートやコンフィチュールをサンドした「ニソワ」など7品のレシピ。
ドゥミ・セックは、スペインの伝統菓子をアレンジした「アルカザール」、卵黄のみを使いしっとり濃厚に焼き上げた生地にチョコレートをコーティングした自信作「ザ・ショコラ」、「ガトーバスク」など4品のレシピ。
生菓子は、「ザッハトルテ」、「シャルロットポワール」、「サンマルク」などの定番のレシピや、友人のショコラティエが考案したという「フジウ」というケーキ、中にキューブ状のムースやジュレを挟んでカラフルに仕上げた「グラースの風」などのオリジナリティ溢れるケーキまで6品のレシピ。
全部で17品のレシピが紹介されています。
Ⅲ フジウのコンフィズリー
藤生シェフといえばコンフィズリーと浮かぶほど多様なコンフィズリーを見てきましたが、いざまとめてみると圧巻です。シンプルな材料なのにこんなに種類の違う菓子ができるのかと改めて奥の深さを感じさせてくれます。
また、なかなか他店には販売していないものも多く、どんな味なのか実際に食べてみたくなるものばかりです。
「キャラメル」や「エンガディナー」、「パートドフリュイ」などの馴染みのあるレシピも紹介されています。
不勉強ですが、初めてつくり方を拝見したボンボン(飴)の数々は作ってみたくてうずうずしました。ぜひ若いパティシエの皆さん、沢山作って勉強されてほしいなと思いました。
全部で20品のレシピが紹介されています。
藤生シェフのインタビューなど
70歳を超えて現役で美味しいお菓子を作り続けている藤生シェフですが、後続の育成もきちんと考えており、本著で印象的な部分を引用させていただきます。
当店ではスタッフは基本的に新卒を採用し、5年前後経ったら次の修業先へのステップアップをすすめています。入社4〜5年目にもなると職人としての基礎が出来てくるので、彼らにはオリジナルの菓子を考案する機会を与えています。
さらりと書かれていた文章ですが、同じ現場にいた人間からすると通常ではなかなか出来ない素晴らしい環境だなと思います。1から技術を教えるのは大変なことですし、育った人材を次々に送り出すのもお店のクオリティを保つのにはなかなか難しいことです。しかし期間を設けることで働く側はより明確な目標を持ってモチベーションを保ったまま働くことができると思います。
他にも印象的なインタビューが読めるので是非!カレボーというチョコレート会社のホームページのインタビューです。